大人の当たり前で子どもの行動を判断しない
「できない」には理由がある
子どもの行動を見ると、大人はつい「どうしてできないの?」と思ってしまうことがあります。
でも、大人にとって当たり前の動作も、子どもにとってはまだ練習中のことばかりです。
大切なのは、できない理由を責めることではなく、子どもの成長の途中を丁寧に見ていくことです。
目次
- 大人の「当たり前」は、子どもの当たり前ではない
- ご飯を食べるだけでも、たくさんの力が必要
- 子どもはまだ善悪の判断も育っている途中
- 「できない」を細かく分解して見る
- 完璧を求めすぎなくていい
- まとめ:子どもは少しずつ世界を学んでいる
大人の「当たり前」は、子どもの当たり前ではない
大人は毎日の生活の中で、たくさんのことを無意識に行っています。
ご飯を食べる。
服を着る。
靴を履く。
手を洗う。
椅子に座る。
順番を待つ。
人の話を聞く。
危ないことを避ける。
大人にとっては、あまり考えなくてもできることかもしれません。
しかし、子どもにとっては違います。
子どもはまだ、体の使い方も、感覚の受け取り方も、物事の意味の理解も、社会のルールも、少しずつ学んでいる途中です。
だから、大人が「これくらいできて当然」と思うことでも、子どもにとってはとても難しいことがあります。
子どもの行動を考えるときには、まずこの視点が大切です。
大人の当たり前で、子どもの行動を判断しすぎないこと。
これは、子どもを甘やかすという意味ではありません。
子どもが今どの段階にいるのかを、丁寧に見ようとする姿勢です。
※子どもの成長に姿勢や感覚の土台は欠かせません。幼児期に大切な感覚統合と発達ピラミッド〜小中学受験にも役立つ力〜

ご飯を食べるだけでも、たくさんの力が必要
たとえば、「ご飯を食べる」という行動を考えてみます。
大人にとっては、食事は毎日の自然な動作です。
でも子どもにとっては、ご飯を食べるだけでも、たくさんの力が必要です。
茶碗を持つ。
箸やスプーンを握る。
食べ物をすくう。
口まで運ぶ。
こぼさないように手を調整する。
噛む。
飲み込む。
味や温度、食感を受け取る。
座っている姿勢を保つ。
食事の時間だと理解する。
これだけのことを、子どもは同時に行っています。
つまり、「ちゃんと食べなさい」と一言で言っても、子どもの中では多くの課題が重なっていることがあります。
箸がうまく使えないのかもしれません。
食感が苦手なのかもしれません。
座っている姿勢を保つのが疲れるのかもしれません。
味に敏感なのかもしれません。
遊びたい気持ちから切り替えられないのかもしれません。
大人から見ると「ふざけている」「わがままを言っている」と見える行動も、実は身体の使い方や感覚、理解の途中で起きていることがあります。
もちろん、食事のマナーや生活習慣を教えることは大切です。
ただ、その前に「この子は今、何につまずいているのだろう」と見てあげることが大切です。
※関連記事です。「姿勢が悪い子」何が問題か。『みいちゃんと山田さん』を見て
子どもはまだ善悪の判断も育っている途中
子どもは、大人と同じように善悪を判断できるわけではありません。
「これはしていいこと」
「これはしてはいけないこと」
「相手が嫌がること」
「危ないこと」
「今は待つ場面」
「ここでは静かにする場面」
こうした判断は、経験を通して少しずつ育っていきます。
たとえば、おもちゃを取ってしまう子がいたとします。
大人から見ると、「人のものを取ってはいけない」と思います。
もちろん、それは教えていく必要があります。
でも子どもは、最初から相手の気持ちや所有のルールを十分に理解しているわけではありません。
「使いたい」という気持ちが先に出る。
相手も同じように使いたいことに気づけない。
順番を待つ力がまだ育っていない。
言葉で「貸して」と伝える力が未熟。
そうした背景があることも多いです。
だからこそ、子どもの行動をすぐに「悪い子」「わがまま」と決めつける必要はありません。
大切なのは、行動の奥にある発達の段階を見ることです。
「使いたかったんだね」
「でも、取られたら相手は嫌な気持ちになるよ」
「貸してって言ってみようか」
「順番に使おうね」
このように、気持ちを受け止めながら、少しずつ社会のルールを伝えていくことが大切です。
「できない」を細かく分解して見る
子どもに何かを身につけてほしいとき、大人はつい結果だけを見てしまいます。
食べられたか。
片づけられたか。
言うことを聞けたか。
友だちと仲良くできたか。
着替えができたか。
しかし、子どもの成長を見るときには、結果だけでなく、そこに至る過程を細かく分解して考えることが大切です。
たとえば「着替えができない」といっても、その中にはいくつもの段階があります。
服の前後が分かる。
腕を通す場所が分かる。
手をうまく動かせる。
頭を通す感覚に慣れている。
ボタンをつまめる。
最後までやりきる集中力がある。
このどこにつまずいているのかによって、必要な支援は変わります。
全部を大人がやってしまう必要はありません。
反対に、「自分でやりなさい」と突き放せばよいわけでもありません。
今の子どもに必要なのは、どこまで見守り、どこを手伝い、どこを少し練習することなのか。
そこを丁寧に見ることが、保育や幼児教育ではとても大切です。
参考(厚生労働省)保育所保育指針
完璧を求めすぎなくていい
子どもには、できるようになってほしいことがたくさんあります。
食事のマナー。
生活習慣。
言葉づかい。
友だちとの関わり。
片づけ。
危険を避ける力。
気持ちを伝える力。
どれも大切です。
でも、すぐに完璧にできる必要はありません。
乳幼児期の子どもは、まだ成長の途中です。
うまくできたり、できなかったりを繰り返しながら、少しずつ身につけていきます。
昨日できたことが、今日はできないこともあります。
家ではできるのに、外ではできないこともあります。
疲れている日には、いつもより甘えたり崩れたりすることもあります。
それは、後退ではなく、成長の途中でよくある姿です。
親も、考えすぎなくて大丈夫です。
「私の関わり方が悪いのかな」
「しつけが足りないのかな」
「このままで大丈夫かな」
そう不安になることもあるかもしれません。
でも、子どもは一度で完成するわけではありません。
大人でも、疲れている日は茶碗を洗いたくないことがあります。子どもならなおさら、心と体のエネルギー残量は日によって違います。バッテリー表示が見えたら便利なのですが、残念ながらまだ標準装備ではありません。
だからこそ、完璧を求めるよりも、今の姿を見ながら、少しずつ支えていくことが大切です。
※関連記事です。「完璧じゃなくていい」─“悩める親”こそ、子どもに寄り添える人
リコポ幼児教育が大切にしていること
リコポ幼児教育では、子どもの行動を「できた・できない」だけで判断しないことを大切にしています。
なぜその行動が起きているのか。
何につまずいているのか。
どの感覚が苦手なのか。
どの動作がまだ難しいのか。
どの理解がまだ育っている途中なのか。
こうしたことを丁寧に見ながら、一人ひとりに合った関わりを考えます。
子どもに何かを身につけてもらうためには、ただ注意するだけでは不十分なことがあります。
動作を分解する。
気持ちを受け止める。
分かりやすい言葉にする。
少しだけ手伝う。
できた部分を認める。
次の一歩を一緒に考える。
そうした関わりが、子どもの成長を支えていきます。
大人の当たり前ではなく、その子の今の発達に合わせて見ること。
これが、乳幼児期の教育ではとても大切だと考えています。
まとめ:子どもは少しずつ世界を学んでいる
子どもは、大人が当たり前にできることを、最初から当たり前にできるわけではありません。
ご飯を食べること。
着替えること。
片づけること。
友だちと関わること。
順番を待つこと。
善悪を判断すること。
その一つひとつに、体の動き、感覚、理解、記憶、経験が関わっています。
だからこそ、子どもの行動を見たときには、すぐに「どうしてできないの」と考えるのではなく、
「今、何を学んでいる途中なのかな」
「どこでつまずいているのかな」
「どこを少し手伝えばよいのかな」
と考えてみることが大切です。
子どもは、少しずつ世界を学んでいます。
大人は、その歩みを急がせるのではなく、丁寧に見守り、必要なところで支える存在でありたいものです。
完璧でなくて大丈夫です。
子どもも、親も、少しずつで大丈夫です。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)