読んだ本シリーズ 稲田豊史『本を読めなくなった人たち』後編 読書の習慣について
稲田豊史『本を読めなくなった人たち』から読書習慣を考える
前回、稲田豊史氏の『本を読めなくなった人たち』をご紹介し、読書をすることは情報を得る手段として「コスパが悪い」という意見があるという話をしました。読書は常に本と向かい合いながら情報を得るものです。
夕食を作りながら、歩きながら、ジムでトレーニングをしながら・・・この「○○しながら」情報を得られるYoutubeをはじめとした動画と比べ、確かに「コスパが悪い」と言えるでしょう。
私も気軽に、かつ簡単に、しかもしっかり難しい問題もかみ砕いて伝えてくれるYoutubeの動画にはとてもお世話になっています。本当にありがたいと思っています。
一方で、私にとって読書をすることの意味についても前回お伝えしました。
私にとって読書は「能動的に」情報を得る、検証する、考えるものであり、この「情報→吸収」というプロセスに「情報→思考→吸収」という「思考」を組み込むことの大切さ、そのトレーニングの大切さも(あくまで私にとって)大事である話もしました。
※前回記事 読んだ本シリーズ 稲田豊史『本を読めなくなった人たち』
もちろん、私がこの記事を書いたところで、読書習慣を身に着けよう、子どもに身に着けさせようという方がすぐに出ると考えていません。
というより、そもそも私は読書が必要であると記事に書いてもいませんし、思想として強く思っているわけでもありません。
ただ、私は前回「読書は和式トイレのようなもの」という話をしました。
洋式水洗が今の日本で圧倒的に主流で快適でもあるが、田舎や山奥にいけば、和式やくみ取り式しかないかもしれない。でも、どんな形式のトイレでも対応できる方が、子どもにとって利点が多いと私は考えています。
それと同じで、動画を見ることが主流であったとしても、大学に入ったら本形式の論文や、医学書を読まなければならないかもしれません。クライアントからの依頼は分厚い文章かもしれません。
「AIで要約」してもやはり全文読んでおかねば不安になるかもしれません。
やはり、子どもには様々な情報の受け取る手段を持っておいた方がいいのではと私は考えます。
ということで、本日は子どもの「読書の習慣」についてこの著書を踏まえて考えていこうかと思います。
本を読めなくなった人たち-コスパとテキストメディアをめぐる現在形 (中公新書ラクレ 861)
読書=筋トレ
読書は思考のトレーニングにもなるというのは前回お伝えしました。
この著書の中にも、そのような文があります。
著者が取材した学生は「スマホを持つ前は読書は好きだったが、スマホを持ち始めて読まなくなった。その結果、村上春樹は読めなくなったし、文章読解力が大きく落ちた」と語っています。
また、これらは実験データではなくあくまで学生たちの声です。著者もその点を押させえたうえで話をしています。
また、著書に出てくる国立大学院博士課程の方は「筋トレしていないと筋力が落ちるのと同じで、読んでいないと読解力が落ちるのは分かります。でもそれって語学環境と同じで読み始めればもとにも戻ります」としています。
私も読書は思考の筋トレであると思いますし、この方がおっしゃっている通り読まないとどんどん読解力は落ちていくとも思っています。
私の知り合いに英語教師がいて、彼は様々な英語圏に留学し、フルブライト基金にも通って留学を続けたていました。
TOEICは満点、英検も1級を取得していますが、やはり日本にいると、英語を使わなくなるので、英語の会話能力は落ちると言っていました。
読解力、読書も同じだと思います。動画にのみ触れ続けていると、読書能力、ひいては読解能力もおちていくのかもしれません。
ただ、作者は「もともと読む能力のない子は能力の破壊も何もない」としています。
筋トレや運動経験のない子はそもそも筋肉がついておらず、習慣も何もないのは当然だと思います。
それでは、そもそも読書の習慣はどのようにたら身につくものなのでしょうか。
親の本棚は大事な視点かも
著書の中に出てくる有名塾講師の方は「本をたくさん読むような子の家が低所得でないことだけは言える」と話しています。
また「子どもたちを見ていると感じるのは、本当に読書好きな子は本を買うということです。本好きな子ほど本は買って読むものという価値観を持っている。買って、読んで、本棚に入れるまでの一連を指して読書と呼ぶ」と主張しています。
私も同じ教育機関で働いていたものとして同意します。
まず本を読む子はそれなりに家庭に本、本棚があり、子どもはそもそも本に触れる機会があります。
そして、正直な話ですが、読書の習慣がある子はやはり読解力はあり、文章を読む癖があり、算数、国語、理科、社会いずれの説明文章にも比較的抵抗なく入っていけます。
なんだかんだ言っても、読書習慣は学習に深くつながっているように私は経験上感じています。
また「本当に読書好きな子は本を買う」ということにも同意します。
彼女彼らは情報は時として有料であり、価値ある情報はお金を支払う価値があることを知っています。
何でも無料の動画や情報に対して距離を置いている、もしくは冷静に見るという価値観が無意識に育っているのかもしれません。
さらに、著者は親が子どもに読ませる努力をしたかどうかも関係あるのではとしています。
なぜならば取材した全学生グループの、偏差値70以上の大学に所属している学生の半数以上が「自分の読書習慣は親の読み聞かせによることが大きい」と答えたからだとしています。
それに関連して「親が本を読んでいたかどうか」「家にちゃんとした本棚があったかどうか」いわゆる「文化資本問題」もあるのではとしています。
「文化資本」とは金銭によらない資産、文化的素養のことで、現在は生まれ育った家庭がどれだけ「文化的」かによって、子どもの文化的素養や学力に影響を与えるといった文脈で議論されることが多いワードです。
これは決定打ではないのでしょうが、やはり読書の習慣と関連があると考えたほうが説明がつきやすいとも思います。

読書と有名人
最後に読書と著名人の関連について書きます。
すべての偉人が決して読書と関連していたとは全く思いません。しかし、しっかり結びついている人もいます。あくまでその結びついている人の紹介です。
読書習慣について考えるとき、興味深いのは、多くの著名人が幼い頃から本と深く関わっていたということです。
芦田愛菜さんは、幼い頃から家庭や図書館を通して本に親しみ、読書を特別な勉強ではなく、生活の一部のように楽しんできたことで知られています。ここから分かるのは、子どもを本好きにするために、最初から難しい本を読ませる必要はないということです。大切なのは、本が自然にそばにある環境です。
科学の世界でも、読書が大きなきっかけになった例があります。天文学者のカール・セーガンは、子どもの頃に図書館で星の本と出会い、宇宙への興味を深めていきました。アインシュタインも、少年時代に科学の本に触れ、「もし光と一緒に走ったらどう見えるのか」というような問いを育てていきます。偉大な発見は、最初から難しい専門書から始まるとは限りません。子ども向けの一冊が、一生続く好奇心の入り口になることがあります。
日本では、南方熊楠のエピソードも印象的です。幼い頃から本を読むだけでなく、百科事典のような書物を書き写しながら知識を吸収していきました。これは、子どもの学びが「覚えなさい」と言われて始まるのではなく、「もっと知りたい」という気持ちから深まっていくことを教えてくれます。
また、ダーウィンは自然に関する本を読みながら、実際に野外で植物や昆虫に親しみました。ここには、読書と体験がつながる大切さがあります。図鑑で見た虫を庭で探す。絵本で見た花を散歩中に見つける。そうした経験によって、本の中の知識は、子どもにとって自分の世界と結びついていきます。
一方で、チャールズ・ディケンズの読書体験は少し違った意味を持っています。ディケンズは苦しい幼少期を過ごしましたが、自伝的要素の強い作品の中には、少年時代に出会った本が、孤独な心を支え、想像力のよりどころになった様子が描かれています。本は知識を与えるだけではありません。ときには、子どもの心に「ここではない世界」を見せ、寂しさや不安に寄り添う存在にもなります。
※ディケンズは幼少期とても貧しかったにも関わらず「読んでおくべき世界の名著10選」に選ばれるくらいの作家になりました。貧しさから這い上がったイメージのある作家であり、本に囲まれたような環境にないだろうとも思われがちです。
しかし、ディケンズは貧しくなる前はそれなりの裕福な家庭で、たくさんの本に触れる機会はありました。ちなみに彼の書いた名著で、自伝的要素の強い『デイヴィッド・コパフィールド』には非常に優秀な乳母(ナニー)が出てきます。ナニーの存在が彼の人生を支えることになります。
ルース・ベイダー・ギンズバーグも、母親に図書館へ連れて行ってもらい、読書や学ぶことの大切さを受け取って育ちました。ビル・ゲイツも子どもの頃から百科事典のような本を読み込んでいたことで知られています。
こうしたエピソードに共通しているのは、読書が単なる「勉強」ではなかったということです。
本は、子どもに知識を与えるだけでなく、想像力を育て、好奇心を広げ、ときには心の支えにもなります。
だからこそ、子どもの読書習慣を育てるうえで大切なのは、「本を読みなさい」と強制することではありません。
家庭の中に本があり、大人が本との出会いをつくり、子どもの「知りたい」「見てみたい」「面白そう」という気持ちを大切にすることです。
本に囲まれた幼少期とは、単に本棚が多い家庭のことではありません。
子どもの好奇心を受け止め、世界を広げるきっかけが、生活の中にあるということなのです。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)