「姿勢が悪い子」何が問題か。『みいちゃんと山田さん』を見て
最近話題になっている「みいちゃんと山田さん」ですが、私よりも詳しい専門家の人たちも発達障害や社会問題としてさまざまな意見を述べていますので、改めて私からその観点で語ることはないのですが・・・
普段幼児教育についてのブログを書いていて、感じた一コマがありましたので、今日はそこをピックアップしてみます。
目次
- みいちゃんと山田さんを見て
- 「ぐにゃっとした姿勢」は何を示しているのか
- ボディイメージとは何か
- 姿勢・集中・学習はなぜつながっているのか
- 「姿勢を良くしなさい」が効かない理由
- 感覚統合という見えない土台
- 発達のピラミッドで考える本当の支援
- まとめ
1. みいちゃんと山田さんを見て感じた1コマ
「みいちゃんと山田さん」ですが、話題作ですのでご存知の方も多いかもしれません。
主役の1人みぃちゃんは知的な遅れや発達障害、家庭環境もあって、普通の社会生活に馴染めておらず、キャバクラから性風俗で生活をしています。その「みいちゃん」という女の子を、(おそらく原作者がモデルである)山田さんからの視点で漫画として描いています。
知的な障害や複雑な家庭環境を持つ子の生きづらさ、社会の非情さなどを描き、過激な描写や、障害に関しての詳しく、鋭い描写も描かれています。
私が今回ふと思ったコマは、みいちゃんではなく、むぅちゃんという子が出てくるシーンです。
むうちゃんはみぃちゃんと同じく知的な遅れを持っています。
ただ、彼女はみいちゃんと比べて家庭環境は悪くなく、障害を受け入れて、社会生活になじもうとしています。しかし、友人であるみぃちゃんに引っ張り回されて、また見下されていてかなり難しい状況にもあります。
私が感じたシーンは下記のむうちゃんが座っているシーンです。
背中がまっすぐではなく、体がどこか定まらず、ぐにゃりと崩れてしまうような姿勢。
机にもたれ、椅子からずり落ちそうになりながら、視線もあちこちに揺れている――そんな描写です。
漫画に出てくるカウンセラーも指摘してますが、この体がぐにゃりと定まらないシーンは障害のある子にありがちです。
そしてこれは障害がなくても、学習・勉強が苦手、集中力がない子にも見られがちな光景です。
また、私がブログでたまにお伝えする感覚統合、ボディイメージそして、発達のピラミッドにも密接に関連します。
今回の記事は、当社の教育アドバイザーである鈴木アトム先生からもアドバイスを頂き、記事にしています。

2. 「ぐにゃっとした姿勢」は何を示しているのか
むうちゃんのように姿勢が安定しない子どもは、決して珍しくありません。特に、知的な遅れや発達の特性がある子どもにはよく見られます。
その理由は単純ではありませんが、一つの大きな鍵が「感覚の統合」にあります。
私たちは自分の体がどこにあって、どんな姿勢をしていて、どのように動いているかを自然に理解しています。これは意識して考えているわけではなく、体の感覚が脳の中でうまくまとめられているから可能なのです。
しかし、この感覚のまとめ方(=統合)に偏りや弱さがあると、体の位置やバランスをうまく感じ取れず、結果として姿勢がぐにゃぐにゃになりやすくなります。
アトム先生も問題行動や学習のつまずきを考えるとき、姿勢は重要な手がかりの一つになると指摘します。姿勢は、その子の体の内側の状態を映す鏡なのです。
※感覚統合については「発達のピラミッド下層部 感覚統合」にまとめています。
感覚統合は“学びの土台”。「感覚」の育成が学習意欲を育てる
参考:手と目の協調性(wikipedia)
3. ボディイメージ
ここで大切になる概念が「ボディイメージ」です。
ボディイメージとは、簡単に言えば、
「私はいま、ここに、こういう姿勢でいて、こう動いている」
という自分の体に関する内的な認識のことです。
これは次の3つの感覚がうまく統合されることで成り立ちます。
| 感覚 | 役割 |
|---|---|
| 触覚 | 体に何が触れているかを感じる |
| 固有感覚 | 筋肉や関節の動きを感じる |
| 前庭覚 | バランスや重力を感じる |
これらがバラバラだと、体の輪郭がぼやけ、姿勢を保つこと自体が難しくなります。むうちゃんの姿勢は、まさにこの状態を象徴しているように見えました。
※ボディイメージに関してはブログ→カテゴリー「発達のピラミッド中層部・ボディイメージ」にまとめてあります。
「ボディ・イメージ」とは?学びや自信を支える“身体の地図”
4. 姿勢・集中・学習はなぜつながっているのか
「体の焦点が定まらないことは、学習が苦手な子や集中できない子にありがちな光景ですか?」と鈴木アトム先生に質問したところ「Yes」との返答。
以下アトム先生の意見を編集したものです。
なぜなら、学習は体の土台の上に成り立つ活動だからです。
例えば文字を書くとき、単に手を動かしているわけではありません。体幹が安定し、肩が支えられ、手指が細かく分離して動く必要があります。さらに、目は文字の列を水平に追い続けなければなりません。
計算も同様です。数は空間的にイメージされるため、空間認知が関わります。さらに、前庭覚(バランス感覚)が安定していなければ、そもそも机に向かって座り続けること自体が大きな負担になります。
土台がぐらついているのに、「集中しなさい」「がんばりなさい」と言われても、子どもにとってはまるで揺れる船の上で宿題をさせられているようなもの。できなくて当然なのです。
5. 「姿勢を良くしなさい」が効かない理由
ここからもアトム先生の意見です。私自身もなるほどと思いました。
多くの大人がやってしまいがちな対応があります。
それは、
「背筋を伸ばしなさい!」
「ちゃんと座りなさい!」
という指導です。
しかし、これはほとんどの場合、根本的な解決になりません。
なぜなら、姿勢が崩れている原因は「やる気」ではなく、体の感覚の土台にあるからです。感覚統合が育っていない子に姿勢だけを直させようとしても、土台がない家の屋根だけ直そうとするようなもの。すぐに崩れてしまいます。
つまり、私がよくお伝えする発達のピラミッドの下層部分が発達していないと、上層部のものが効果的に発達していかないということが深く当てはまります。
学習のためには→姿勢(ボディイメージ)が必要→そのためにはまず感覚統合が必要 というサークルが大事となるわけです。
アトム先生はこう言います。
「勉強が苦手だから姿勢を直す、ではなく、姿勢の土台を育ててから学習につなげるのが本筋です。」

6. 感覚統合という見えない土台
感覚統合とは、さきほどの触覚・固有感覚・前庭覚をうまくまとめ、体をスムーズに使えるようにする力です。
これは机上の勉強では育ちません。むしろ、次のような活動を通して育まれます。
- ブランコや回転遊具で体を揺らす
- でこぼこ道を歩く
- クッションの上で跳ねる
- 重いものを押したり引いたりする
一見ただの遊びですが、実はこれらがボディイメージを育て、姿勢の安定につながっていきます。子どもにとって「楽しい遊び」は、最高の発達トレーニングなのです。
※関連記事です。
学習意欲と姿勢は“平衡感覚”から育つ
7. 発達のピラミッドで考える本当の支援
私たちが大切にしているのは「発達のピラミッド」という考え方です。
下から順に積み上げていくことが重要で、順番を飛ばすとうまくいきません。
感覚統合 → ボディイメージ → 姿勢 → 集中 → 学習
この流れが基本です。上だけを直そうとしても、土台がなければ子どもは苦しいままです。
むうちゃんのような姿勢の子どもに必要なのは、叱責でも根性論でもありません。まずは体の感覚を豊かにすること。そこから自然に姿勢が整い、集中力が生まれ、学びが楽しくなっていきます。
※発達のピラミッドに関してはよくブログでも触れています。
幼児教育は学びの土台づくり 基礎感覚・身体調整・高次機能を育む
8. まとめ
「姿勢が悪い子」は、怠けている子でも、やる気がない子でもありません。むしろ、体の中で一生懸命にバランスを取ろうとしている子どもたちです。
むうちゃんの姿勢は、私たち大人にこう問いかけているように思えます。
「どうして私はこう座っているのだろう?」
その問いに応えるためには、表面の行動ではなく、体の土台に目を向ける必要があります。
感覚統合を育て、ボディイメージを育て、発達のピラミッドを一段ずつ積み上げる――それが、本当に子どもを支える姿勢づくりなのです。
パパママからよくある質問3つ
Q1.子どもの姿勢が悪いとき、「今すぐ直させる」必要はありますか?
緊急性が高い痛みや転倒リスクがなければ、まずは「直させる」より「なぜ崩れているか」を見ることが優先です。姿勢の崩れは、触覚・固有感覚・前庭覚の統合が十分でないサインであることが多く、単なる注意では改善しません。遊びや体を使った活動を通して感覚統合を育てることで、結果として姿勢は自然に整っていきます。
Q2.勉強が苦手な子ほど姿勢が悪いのは本当ですか?
関係はあります。 学習は体の土台の上に成り立つ活動だからです。体幹が安定していないと文字を書くときの手指の分離が難しく、前庭覚が不安定だと長時間座って集中すること自体が大きな負担になります。ただし「姿勢が悪い→勉強ができない」と単純化するのではなく、感覚統合→ボディイメージ→姿勢→集中→学習という発達の流れで考えることが大切です。
Q3.家庭でできる感覚統合のサポートはありますか?
特別な教材がなくても大丈夫です。例えば、ブランコ・トランポリン・クッション遊び・坂道やでこぼこ道歩き・重い物を押す遊びなどは、前庭覚や固有感覚を育てます。また、砂遊びや粘土遊び、タオルを絞る、雑巾がけなどは触覚を豊かにします。「姿勢を直す練習」よりも「体を楽しく使う遊び」を増やすことが近道です。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)
監修:鈴木アトム