子どもの共同注意とは?同じものを見る力と学びの始まり
赤ちゃんは、ただ一人で世界を見ているわけではありません。大人の顔や視線、声の調子を手がかりにしながら、「相手が何を見ているのか」「何に注目しているのか」を少しずつ感じ取っていきます。このように、大人と子どもが同じものに注意を向ける力を「共同注意」といいます。今回は、絵本の読み聞かせや授業にもつながる、共同注意の基本について見ていきます。
※以前にも共同注意について書いています。こちらも参考にしてください。「共同注意」で育つ! 幼児教育に欠かせない親子のまなざし共有
目次
- 共同注意とは
- 絵本や授業の土台になる力
- 赤ちゃんは大人の視線を少しずつ追うようになる
- 共同注意は年齢とともに発達する
- 大人の関わり方で共同注意は促される
- まとめ
1. 共同注意とは
共同注意とは、大人と子どもが同じものに注意を向けることです。
たとえば、保護者が絵本の犬を見ながら、
「わんわん、いるね」
と声をかける。
子どももその犬の絵を見る。
このとき、保護者と子どもは同じ対象に注意を向けています。
これが共同注意です。
共同注意は、単に「同じものを見ること」だけではありません。
同じものを見ながら、気持ちや意味を共有していく力でもあります。
「これ、面白いね」
「ここにあるね」
「いま、このことを話しているんだね」
子どもは、こうした関わりの中で、ものの名前、相手の気持ち、言葉の意味を少しずつ学んでいきます。
※参考(PMC)共同注意中のコミュニケーション信号は、乳児と養育者の神経プロセスを促進する。
2. 絵本や授業の土台になる力
共同注意は、絵本の読み聞かせや学校の授業など、教育活動の大前提になる力です。
絵本を読むとき、大人がページを見て、子どもも同じページを見る。
授業では、先生が黒板や教材を指し、子どもたちがそこに注意を向ける。
これらはすべて、共同注意が土台になっています。
もし大人が見ているものと子どもが見ているものがまったく違っていれば、言葉の意味は伝わりにくくなります。
たとえば、大人がりんごを見ながら「赤いね」と言っても、子どもが別のおもちゃを見ていたら、「赤い」が何を指しているのか分かりにくくなります。
反対に、子どもがりんごを見ているときに、
「りんごだね」
「赤いね」
「おいしそうだね」
と声をかけると、子どもは見ているものと言葉を結びつけやすくなります。
つまり共同注意は、言葉の学びや理解の土台でもあるのです。

3. 赤ちゃんは大人の視線を少しずつ追うようになる
赤ちゃんは、生まれてすぐから大人と同じように視線を理解できるわけではありません。
けれども、成長とともに、大人の顔の向きや視線の方向を手がかりにして、何を見ているのかを少しずつ追うようになります。
生後半年頃までには、大人の顔や頭の向きから、大まかな方向を感じ取る力が育っていくと考えられます。
最初は、「あちらを向いたから、そちらに何かあるのかな」という大まかな反応です。
まだ、どの物を見ているのかを正確に分かっているわけではありません。
それでも、これは大きな発達です。
赤ちゃんが大人の視線を追うということは、相手の注意の向きに気づき始めているということです。
4. 共同注意は年齢とともに発達する
共同注意に関わる力は、年齢とともに少しずつ発達します。
生後半年頃には、大人の視線や顔の向きの大まかな方向に反応し始めます。
1歳頃になると、対象が赤ちゃんの視野の中にある場合、大人が見ているものの場所をかなり正確に見つけられるようになっていきます。
たとえば、大人が横にあるおもちゃを見たとき、赤ちゃんもそのおもちゃを見るようになります。
さらに1歳半頃になると、目の前に見えているものだけでなく、背後や視野の外にあるものに対しても、大人の視線を手がかりに探そうとする力が育っていきます。
これは、赤ちゃんが「相手は自分と違う場所を見ているかもしれない」と少しずつ理解していくことにもつながります。
もちろん、発達には個人差があります。
月齢だけで「できる・できない」と決めつける必要はありません。
大切なのは、子どもが少しずつ「人と同じものを見る」「相手の注意に気づく」経験を積んでいくことです。
5. 大人の関わり方で共同注意は促される
共同注意は、子どもだけの力で育つものではありません。
大人側の振る舞いも大きく影響します。
たとえば、大人が子どもの目線の高さに合わせる。
子どもが見ているものを見る。
ゆっくりと話しかける。
少し抑揚をつけて、聞き取りやすい声で語りかける。
こうした関わりは、共同注意を促しやすくします。
絵本を読むときも、ただ文字を読み上げるだけでなく、
「ここにいるね」
「これは何かな」
「わんわん、歩いているね」
と、子どもが見ている場所に合わせて声をかけると、同じものを見ている感覚が生まれやすくなります。
また、子どもが別のものを見ているときに、無理にこちらを向かせる必要はありません。
子どもが見ているものに、大人が寄り添う。
そのうえで、少しずつ一緒に見る対象を広げていく。
この姿勢が大切です。
6. まとめ
共同注意とは、大人と子どもが同じものに注意を向ける力です。
これは、絵本の読み聞かせ、会話、遊び、そして学校の授業にもつながる大切な土台です。
赤ちゃんは成長とともに、大人の顔や視線の方向を手がかりにして、相手が何を見ているのかを少しずつ理解していきます。
生後半年頃には大まかな方向に反応し、1歳頃には視野の中にある対象を見つけやすくなり、1歳半頃には視野の外にあるものにも注意を向けられるようになっていきます。
そして、この力は大人の関わり方によって促されます。
目線を合わせる。
ゆっくり話す。
抑揚をつける。
子どもが見ているものに言葉を添える。
こうした日常の小さな関わりが、子どもの共同注意を育てていきます。
共同注意は、子どもが「人と一緒に世界を見る」ための力です。
その積み重ねが、言葉の理解、人との関わり、学びの土台になっていくのです。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)