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子どもの記憶の発達 赤ちゃんは経験をどう覚えているのか

子どもの記憶の発達 赤ちゃんは経験をどう覚えているのか

子どもの学びは、その場で反応するだけでは終わりません。
見たこと、聞いたこと、触れたこと、楽しかったこと、安心したこと。
そうした経験が少しずつ記憶として残り、次の行動や学びにつながっていきます。

目次

  1. 学習は記憶を土台にしている
  2. 赤ちゃんにも記憶はあるのか
  3. 記憶の発達は少しずつ進む
  4. ロヴィー=コリアーのモビール実験
  5. 実験の方法
  6. 実験から分かったこと
  7. 記憶は「思い出すきっかけ」に支えられる
  8. 育児や保育で大切にしたいこと
  9. まとめ:子どもは経験を記憶しながら育っている

学習は記憶を土台にしている

子どもは、毎日の経験を通して多くのことを学んでいます。

でも、学習はその場だけで完結するものではありません。

昨日うまくできたことを、今日またやってみる。
前に楽しかった遊びを、もう一度求める。
一度怖かった経験を、次に避けようとする。
大人のやり方を見て、時間がたってからまねをする。

こうした姿には、記憶が関わっています。

もし経験が何も残らなければ、子どもは毎回ゼロから始めることになります。
でも実際には、子どもは経験を少しずつ蓄積し、それを次の行動に生かしています。

つまり、学習は記憶の働きを土台にしています。

※関連記事です。【子どもの記憶の土台】学習に不可欠なワーキングメモリ


赤ちゃんにも記憶はあるのか

大人から見ると、赤ちゃんはまだ言葉で説明できません。

「昨日これを覚えたよ」
「前に見たことがあるよ」
「この遊び、覚えているよ」

とは言えません。

そのため、昔は「赤ちゃんはどのくらい記憶できるのか」を調べるのが難しいと考えられていました。

しかし、赤ちゃんは言葉で答えられなくても、行動で記憶の痕跡を示すことがあります。

たとえば、

前に見たおもちゃに反応する。
知っている人の顔を見ると安心する。
いつもの遊びを期待する。
前に大人が見せた動作をまねる。
ある状況になると、以前と同じ行動をする。

こうした行動から、赤ちゃんが経験を記憶している可能性を考えることができます。

一時的に情報を保持しながら、同時に処理を行う」能力

記憶の発達は少しずつ進む

記憶には、いくつかの過程があります。

まず、経験を受け取ること。
次に、それを頭の中に残すこと。
そして、必要なときに思い出すこと。

大人にとっては自然なことに思えますが、赤ちゃんにとっては、この一つひとつが発達の途中です。

同じ経験でも、月齢によって記憶の残り方は変わります。
短い時間なら覚えていられることもあれば、長い時間がたつと忘れてしまうこともあります。
また、同じ場所、同じおもちゃ、同じ雰囲気だと思い出しやすいこともあります。

つまり、赤ちゃんの記憶は「あるか、ないか」ではなく、発達の中で少しずつ育っていくものです。


ロヴィー=コリアーのモビール実験

赤ちゃんの記憶研究で有名なのが、ロヴィー=コリアーのモビールを使った実験です。

ロヴィー=コリアーは、赤ちゃんが経験をどのくらい覚えているのかを調べるために、モビールを使った方法を用いました。

この実験は、赤ちゃんが言葉で答えられなくても、足の動きという行動から記憶を調べられる点が特徴です。

対象となったのは、主に生後3か月ごろの赤ちゃんです。

※参考(PMC)ロヴィー=コリアーの研究で知られるモビール課題では、赤ちゃんの足の動きとモービルの動きが結びつけられます。赤ちゃんがその関係を覚えているかを、後日の足の動きから調べることができます。The mobile conjugate reinforcement paradigm in a lab setting


実験の方法

実験では、赤ちゃんの足首にリボンを結び、そのリボンをベビーベッドの上にあモビールにつなげます。

赤ちゃんが足を動かすと、リボンが引っ張られ、モビールが動きます。

最初、赤ちゃんは偶然足を動かします。
すると、モビールが揺れます。

何度か経験するうちに、赤ちゃんは少しずつ、

「自分が足を動かすと、モビールが動く」

という関係を学んでいきます。

すると、赤ちゃんはモービルを動かすために、足をよく動かすようになります。

その後、時間を置いて、再び同じような状況にします。
もし赤ちゃんが以前の経験を覚えていれば、また足をよく動かすと考えられます。

このようにして、赤ちゃんの記憶がどのくらい残っているかを調べました。


実験から分かったこと

この実験から分かった大切なことは、赤ちゃんは非常に幼い時期から、経験を学習し、一定期間記憶できるということです。

3か月の赤ちゃんでも、

「足を動かす」
「モビールが動く」

という関係を学びます。

そして、時間を置いた後にも、その経験を思い出すような行動を示すことがあります。

つまり、赤ちゃんはその場の反応だけで生きているわけではありません。

経験を受け取り、記憶し、後の行動に反映させているのです。

これは、子どもの学習を考えるうえでとても重要です。

赤ちゃんにとって、日々の経験は一つひとつ記憶の材料になります。
楽しかった経験、安心した経験、怖かった経験、不安だった経験。
そうしたものが少しずつ積み重なっていきます。


記憶は「思い出すきっかけ」に支えられる

赤ちゃんの記憶を考えるときには、もう一つ大切な点があります。

それは、記憶は思い出すきっかけによって支えられるということです。

大人でも、ある匂いをかぐと昔の記憶がよみがえることがあります。
懐かしい音楽を聞くと、その時の気持ちを思い出すことがあります。
昔行った場所に行くと、忘れていた出来事を思い出すことがあります。

赤ちゃんも同じように、環境や手がかりによって記憶を思い出しやすくなることがあります。

同じモービル。
同じ場所。
同じ雰囲気。
見慣れた人。
いつもの声。
繰り返されるやり取り。

こうした手がかりがあることで、赤ちゃんは以前の経験を思い出しやすくなると考えられます。

だからこそ、乳幼児期には「繰り返し」や「安心できる環境」が大切です。

いつもの歌。
いつもの絵本。
いつもの寝る前の流れ。
いつもの声かけ。
いつもの抱っこの安心感。

こうした繰り返しは、単なる習慣ではありません。
子どもの記憶と安心を支える大切な手がかりになります。


育児や保育で大切にしたいこと

子どもの記憶の発達を考えると、育児や保育で大切にしたいことが見えてきます。

まず、子どもは経験を記憶している可能性があるという視点を持つことです。

赤ちゃんだから分からない。
小さいから覚えていない。
一回だけだから大丈夫。

そう考えすぎないことが大切です。

もちろん、赤ちゃんが大人と同じように記憶しているわけではありません。
言葉で整理された記憶ではなく、感覚や感情と結びついた記憶も多いでしょう。

それでも、安心した経験や嫌だった経験は、子どもの中に何らかの形で残ることがあります。

だからこそ、日々の関わりでは、

安心できる声をかける。
繰り返しのある生活リズムをつくる。
楽しい経験を積み重ねる。
怖かった経験の後には、安心できる関わりをする。
子どもの反応を見ながら、無理のない経験を重ねる。

こうしたことが大切になります。

子どもは、小さな記憶を積み重ねながら育っています。
その記憶は、未来の行動や学びの土台になっていきます。


まとめ:子どもは経験を記憶しながら育っている

子どもの学習は、記憶を土台にしています。

見たこと。
聞いたこと。
触れたこと。
楽しかったこと。
安心したこと。
怖かったこと。
何度も繰り返したこと。

こうした経験が少しずつ記憶として残り、次の行動に影響していきます。

ロヴィー=コリアーのモービル実験は、赤ちゃんがとても幼い時期から、経験を学習し、一定期間記憶できることを示した大切な研究です。

赤ちゃんは、ただその場に反応しているだけではありません。
経験を受け取り、記憶し、後の行動に生かしているのです。

だからこそ、乳幼児期の関わりは大切です。

安心できる経験を重ねること。
楽しいやり取りを繰り返すこと。
子どもが思い出しやすい環境を整えること。
無理に詰め込むのではなく、日々の中で少しずつ経験を積み重ねること。

その一つひとつが、子どもの記憶と学びの土台になります。

赤ちゃんの毎日は、小さな記憶の積み木のようなものです。
一つひとつは小さくても、積み重なることで、子どもの世界は少しずつ広がっていきます。


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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)