「三つ子の魂百まで」が伝える幼児教育の大切さ
「三つ子の魂百まで」ということわざを、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
この言葉は、幼い頃に身についた性格や気質は、年齢を重ねても残りやすいという意味です。ここでいう「三つ子」は三人きょうだいではなく、3歳頃までの幼い子どもを表しています。
昔の人は、現在のような発達心理学や脳科学の知識がなかった時代から、幼少期の経験や周囲の関わりが、その後の成長に大きく影響することを経験的に理解していたのでしょう。
※参考(コトバンク)三つ子の魂百まで
3歳までにすべてが決まるわけではない
ただし、「三つ子の魂百まで」は、3歳までに性格や能力が完全に決まり、その後は変わらないという意味ではありません。
人は成長してからも、新しい経験や人との出会いを通して変化していきます。
このことわざから受け取りたいのは、早期教育を急いだり、多くの知識を詰め込んだりする必要性ではなく、幼児期の環境や大人との関わりが、子どもの将来の土台になるということです。
現在では脳科学からも説明されている
現在の脳科学では、脳は出生前から発達を始め、幼児期に基本的な神経回路が急速につくられていくことが分かっています。
特に、保護者や周囲の大人との応答的な関わり、安心できる環境、遊びや体験は、認知、感情、社会性などの基礎となる脳の発達に影響します。
一方で、脳は幼児期を過ぎると成長しなくなるわけではありません。大人になってからも新しい神経のつながりは形成されます。
そのため、幼児期は「すべてが決まる期限」ではなく、その後の学習や生活を支える基礎がつくられやすい大切な時期と考えるのが適切です。
幼児教育で育てたいもの
幼児教育で大切なのは、文字や数字を早く覚えることだけではありません。
子どもが安心して過ごしながら、
- 人を信頼すること
- 自分の気持ちを表すこと
- 興味を持って試してみること
- 失敗しても再び取り組むこと
- 人の話を聞き、自分の考えを伝えること
などを経験することが、その後の学びや人間関係につながっていきます。
幼児期の遊びや生活は、一見すると勉強とは関係がないように見えるかもしれません。
しかし、遊びの中で考え、工夫し、人と関わる経験こそが、思考力、意欲、自己調整力、コミュニケーション能力などの土台になります。
保育所保育指針にも通じる考え方
現在の保育所保育指針でも、保育所は子どもが「生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期」を過ごす場所とされています。
また、一人ひとりの発達過程や個人差に配慮し、子どもが自発的、意欲的に環境へ関わり、生活や遊びを通してさまざまな経験を積むことが重視されています。
これは、「三つ子の魂百まで」という昔からの言葉が伝えてきた、幼児期の環境や経験を大切にする考え方にも通じます。
幼児期に必要なのは、安心できる関わり
幼児教育の重要性を考えると、「今のうちに何かを身につけさせなければ」と焦ってしまうこともあります。
しかし、子どもの成長を支える基本は、安心できる大人との関係です。
話しかけたときに応えてもらうこと、興味を受け止めてもらうこと、失敗しても見守ってもらうこと。こうした毎日の積み重ねが、子どもの心と学びの土台を育てます。
「三つ子の魂百まで」は、子どもの将来を3歳までに決めなければならないという言葉ではありません。
幼い時期だからこそ、一人ひとりの気持ちや発達を大切にし、温かく丁寧に関わる必要があることを、昔から私たちに伝えてきた言葉なのです。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)