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動く絵本教育—パネルシアターが育む「想像力」と「表現力」

動く絵本教育—パネルシアターが育む「想像力」と「表現力」

保育園や幼児教室で、子どもたちの目がキラキラ輝く時間があります。
それが「パネルシアター」です。
最近日経新聞のニュースになっていたので、今日はこのパネルシアターについて触れてみたいと思います。

子供が楽しみながら学ぶ「パネルシアター」 海外でも普及(2025年11月4日 日本経済新聞)
※会員限定の記事ですので、概要だけの記事紹介になり申し訳ありません。

絵本とも紙芝居とも違う、不思議で魅力的な“動く物語”の世界です。
今回は、パネルシアターの成り立ちや教育的な価値をわかりやすく解説します。


パネルシアターとは

パネルシアターとは、起毛素材の布を貼ったパネル(舞台)に、不織布で作った登場人物や背景を“貼ったりはがしたり”しながら物語を展開する教材です。
演じる人(保育士や教育者)が声や歌、音楽を交えて進行し、子どもたちは動く絵を目で追いながらお話の世界に引き込まれていきます。

もともとは、静止画で物語を見せる紙芝居や絵本に対し、「もっと動きと参加がある表現を」として生まれた手法です。
貼って・はがして・動かして——視覚・聴覚・想像力を同時に刺激するパネルシアターは、幼児教育においてとても効果的な教材のひとつです。


パネルシアターの歴史

パネルシアターの起源は、欧米の「フランネルグラフ」と呼ばれる視覚教材にあります。
フランネル布を貼ったボードに紙人形をつけて物語を語るもので、主にキリスト教の教会や教育現場で使われていました。

日本で「パネルシアター」という形が生まれたのは1970年代で、
浄土宗の僧侶・古宇田亮順氏が、不織布と起毛布を組み合わせた“新しい保育表現”として考案したのが始まりです。
当時はまだテレビも家庭に普及しきっていなかった時代です。
子どもたちは、動きと声で展開するパネルシアターに夢中になり、保育園や幼稚園を中心に一気に広がりました。

今では日本独自の文化として定着し、保育士の実技試験や保育教材の通販サイトでも定番のアイテムとなっています。

パネルシアター参考画像

パネルシアターの特長

① 視覚的でわかりやすい

登場人物や場面が実際に動くことで、子どもたちは「次はどうなるの?」と自然に集中します。
絵本のようにページをめくるのではなく、目の前で展開される“ライブ感”が魅力です。

② 参加・対話型の学び

演じる人が「次はだれが出てくるかな?」「この子はどんな気持ちだろう?」と問いかけながら進めるため、子どもたちも物語の“中に入っていく”感覚を味わいます。
言葉で答えたり、動きを真似したり、心で共感したり。
単なる鑑賞ではなく、“参加する教育”なのです。
参加できる教育であることは重要なキーワードです。

③ 手づくりで自由にアレンジできる

背景やキャラクターを不織布で作れば、何度でも貼ってはがせます。
季節行事やテーマに合わせてオリジナルの作品を作る先生も多く、創造性を育てる教材としても優れています。


パネルシアターと幼児教育

では、パネルシアターは幼児教育の中でどんな意味をもつのでしょうか?
絵本や紙芝居との違いを見ながら、その教育的価値を考えてみましょう。

形式特徴教育的効果
絵本静止画でストーリーを読む語彙・想像力の発達
紙芝居ページをめくりながら語る聴覚的理解・集中力
パネルシアター絵が動き、参加・対話がある表現力・社会性・想像力・集中力

パネルシアターは「見る」「聞く」「考える」「反応する」という複合的な経験を提供します。
子どもは登場人物の動きや表情に共感し、自分の中で“もし自分だったら…”という他者視点を育みます。
これは、思いやりや共感性といった非認知能力の発達にも大きく関わります。


※絵本教育に関してはこちらを参考にしてみてください。
 『しろいうさぎとくろいうさぎ』から考える絵本教育とシッター活用
 『スイミー』と幼児教育 〜読み聞かせと会話で育つ非認知能力〜

パネルシアターは単なる出し物ではなく、「子どもの心を動かす教材」です。
見るだけではなく、感じて、考えて、声に出して、心でつながる。
その体験こそが、幼児期に最も大切な学びです。

お子さまが物語を見ながら「この子、うれしそうだね」「どうして泣いちゃったの?」と感じるとき、
そこにはもう“他者を思いやる心”が芽生えています。


パネルシアターで育つ5つの力

  1. 想像力
     絵が動くことで、「次に何が起きるのか」を考える力が自然に育ちます。
  2. 言語表現力
     登場人物のセリフを真似したり、自分で話すことで言語発達が促されます。
  3. 集中力
     変化のある展開は子どもの注意を惹きつけ、集中して見る習慣を育てます。
  4. 共感力・社会性
     キャラクターの感情や関係性を理解することで、他者の気持ちを想像する力が高まります。「共感性」を養う幼児教育 「思いやりのある子ども」は幸福度が高い(参考記事)
  5. 創造力
     自分で作って演じる過程で、発想力・表現力・主体性が養われます。

通販でも買えるパネルシアター教材

最近では、パネルシアターは通販でも簡単に購入できます。
有名なものには「パネル布+Pペーパーセット」「人気の童話シリーズ」「季節行事セット」などがあり、初心者でもすぐに始められます。
また、デジタル版のテンプレートやカラー印刷データをダウンロードして作成するタイプも人気です。

たとえば以下のような教材があります。

  • 「はらぺこあおむし」や「おおきなかぶ」などの定番物語
  • 年齢別に構成された「季節のうたパネル」シリーズ
  • 教育用に設計された「感情を学ぶ」「マナーを学ぶ」テーマ教材

リコポ幼児教育でも、子どもの発達や興味関心に合う場合は、保護者の方と相談のうえでパネルシアターを取り入れた教育的アクティビティを行うことがあります。
「絵本が苦手」「落ち着きが続かない」というお子さまでも、動きと声で語られる物語なら自然に引き込まれることが多いのです。


パパママからよくある質問3つ

Q1. 家でもパネルシアターを作れますか?

→ 100円ショップのフェルトや不織布で十分に作れます。簡単な動物や果物から始めてみましょう。

Q2. 子どもがすぐ飽きてしまいます。どう工夫すればいい?

→ 物語を短く区切ったり、歌やセリフを一緒に言わせると集中が続きます。

Q3. 教育的なねらいを持たせるには?

→ 感情の表現・数の理解・順序の認識など、日常の学びと結びつけて活用するのがおすすめです。


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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)

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