しつけとは何か?「躾」と「仕付け」 子どもの自立につながる関わり
子育ての中で、よく使われる言葉の一つに「しつけ」があります。
「食事のマナーを身につける」
「挨拶ができるようにする」
「生活習慣を整える」
「人に迷惑をかけない行動を教える」
このように、しつけは子どもの成長に欠かせない大切な関わりです。
一方で、「しつけ」という言葉には、少し厳しい印象を持つ方もいるかもしれません。
しかし本来のしつけは、子どもを強く押さえつけることではありません。
子どもが社会の中で安心して生きていけるように、少しずつ生活の型や人との関わり方を身につけていくためのものです。
今回は、「躾」と「仕付け」という言葉の違いや歴史にもふれながら、幼児教育におけるしつけの意味について考えていきます。
※食事に関して関連記事です。第2回の動画を終えて―子どもの食事は、大切な学びの時間
目次
- しつけのもともとの意味
- 「仕付け」から「躾」へ
- 現代におけるしつけの意味
- しつけで育つもの
- 子どもは親を見て学ぶ
- 幼児教育としつけの関係
- よいしつけは子どもの自立を助ける
- まとめ
1. しつけのもともとの意味
「しつけ」は、もともと「仕付け」と書かれていました。
仕付けには、田畑に作物を植え付けるという意味があります。
苗床で育った苗を、本田に植え替えることを「しつける」と表現したと言われています。
ここで大切なのは、「無理やり形を変える」ということではありません。
小さな苗がしっかり根を張り、これから大きく育っていける場所へ移していく。
その成長を願って、環境を整える。
これが、もともとの「仕付け」のイメージです。
子どものしつけも、これに近いものがあります。
子どもは最初から、社会のルールや生活習慣を知っているわけではありません。
食事、睡眠、着替え、挨拶、人との距離感、順番を待つこと、気持ちを伝えること。
これらを、日々の生活の中で少しずつ覚えていきます。
つまり、しつけとは、子どもが自分の力で社会の中に根を張っていくための土台づくりでもあるのです。
2. 「仕付け」から「躾」へ
「仕付け」は、やがて裁縫の言葉としても使われるようになりました。
和服を仕立てるときには、縫い目や折り目を正しく整えるために、あらかじめ仮に縫っておくことがあります。
これを「仕付け」といいます。
仕付け糸は、布の形を整え、美しく仕上げるために必要なものです。
ただし、それは本縫いのように強く縫い込むものではありません。
あくまでも、形を整えるための一時的な支えです。
この考え方は、子どものしつけにも通じます。
子どもが小さいうちは、大人の声かけや手助けが必要です。
「ごはんの前に手を洗おうね」
「お友だちが使っているから、少し待とうね」
「ありがとうって言えると気持ちがいいね」
このように、大人がそばで支えながら、生活や人との関わり方を伝えていきます。
しかし、いつまでも大人がすべてを決めるわけではありません。
子どもが成長するにつれて、少しずつ自分で考え、自分で行動できるようになることが大切です。
しつけは、子どもを縛るための糸ではありません。
子どもが自分らしく成長するために、一時的に形を支える糸のようなものなのです。
3. 現代におけるしつけの意味
現代の「しつけ」は、主に子どもが社会生活を送るために必要な習慣や態度を身につけることを意味します。
具体的には、次のようなものがあります。
・生活習慣
・食事や睡眠のリズム
・挨拶や返事
・片づけや身の回りのこと
・人との関わり方
・公共の場でのマナー
・順番を待つこと
・約束を守ること
・善悪や思いやりの感覚
こうして見ると、しつけは単なる「ルールを守らせること」ではありません。
子どもが、自分の生活を整え、人と気持ちよく関わり、社会の中で安心して過ごせるようになるための学びです。
そのため、しつけには厳しさだけでなく、安心感や信頼関係が欠かせません。
大人が感情的に叱り続けるだけでは、子どもは「なぜそれが必要なのか」を理解しにくくなります。
むしろ、怖いから従う、怒られるからやめる、という形になってしまうこともあります。
本当に大切なのは、子どもが少しずつ意味を理解し、自分で行動できるようになることです。
4. しつけで育つもの
しつけによって育つものは、表面的な行儀のよさだけではありません。
たとえば、毎日決まった時間に寝る習慣は、体の健康だけでなく、気持ちの安定にもつながります。
食事のマナーは、栄養をとるだけでなく、人と一緒に食事を楽しむ力にもつながります。
片づけは、物を大切にする気持ちや、自分の行動に区切りをつける力にもつながります。
また、「順番を待つ」「相手の話を聞く」「ごめんねを伝える」「ありがとうを言う」といった関わりは、社会性や思いやりを育てます。
しつけは、子どもの外側の行動を整えるだけでなく、内側の心も育てていくものです。
生活習慣、マナー、道徳的な意識。
これらは、幼児期からの毎日の積み重ねによって、少しずつ子どもの中に根づいていきます。
5. 子どもは親を見て学ぶ
しつけを考えるうえで、とても大切なことがあります。
それは、子どもは大人の言葉だけでなく、大人の姿を見て学ぶということです。
子どもは、親や身近な大人の行動をよく見ています。
大人が挨拶をする姿、人に感謝する姿、物を大切にする姿、約束を守る姿。
その一つひとつが、子どもにとって大きな学びになります。
反対に、大人が「片づけなさい」と言いながら自分の物を乱雑に扱っていたり、「人には優しくしなさい」と言いながら乱暴な言葉を使っていたりすると、子どもは混乱してしまいます。
もちろん、親も完璧である必要はありません。
忙しい日もあります。
感情的になってしまう日もあります。
うまくいかない日もあります。
大切なのは、完璧な姿を見せ続けることではなく、親自身も生活や言葉を整えようとする姿を見せることです。
「さっきは強く言いすぎたね。ごめんね」
「一緒に片づけようか」
「ありがとうって言われるとうれしいね」
こうした日々のやり取りそのものが、子どもにとってのしつけになります。
6. 幼児教育としつけの関係
幼児教育というと、文字や数、知識を学ぶことをイメージする方もいるかもしれません。
しかし、幼児教育の土台には、生活習慣や人との関わり、感情のコントロール、自分でやってみようとする力があります。
たとえば、話を聞く力。
順番を待つ力。
気持ちを切り替える力。
自分の物を準備する力。
失敗してももう一度やってみる力。
これらは、将来の学習にも深く関わります。
どれだけ知識を教えても、生活のリズムが整っていなかったり、人の話を聞く経験が少なかったり、自分で考えて行動する力が育っていなかったりすると、学びは安定しにくくなります。
つまり、しつけは幼児教育の土台でもあります。
ただし、ここでいうしつけは、子どもを大人の思い通りに動かすことではありません。
子どもの発達段階に合わせて、少しずつ生活の型や社会のルールを伝えていくことです。
小さな子どもには、何度も同じことを伝える必要があります。
すぐにできなくても当然です。
そのたびに、大人が落ち着いて繰り返し伝えていくことが大切です。
しつけは、一度言えば終わりではありません。
毎日の生活の中で、少しずつ身につけていくものです。
7. よいしつけは子どもの自立を助ける
よいしつけの目的は、子どもを大人に従わせることではありません。
最終的な目的は、子どもが自分で考え、自分で行動し、人と関わりながら生きていけるようになることです。
小さい頃は、大人が手を添える必要があります。
しかし、成長とともに、その手助けは少しずつ減っていきます。
最初は一緒に手を洗う。
次に声をかければできるようになる。
やがて自分で気づいて行動できるようになる。
このように、しつけは自立への階段です。
子どもが自分の生活を整えられるようになること。
人との関わり方を学ぶこと。
自分の気持ちを調整する力を育てること。
社会の中で安心して過ごせる力を身につけること。
これらは、子どもが充実した人生を送るための大切な力になります。
しつけとは、子どもの自由を奪うものではありません。
むしろ、子どもが将来自分らしく生きるための自由を支えるものです。
8. まとめ
「しつけ」は、もともと「仕付け」と書かれ、田畑に作物を植え付けることや、和服の縫い目を整えることに関わる言葉でした。
そこから、子どもが生活習慣や礼儀作法を身につけるという意味へと広がっていきました。
この歴史を知ると、しつけの本質が少し見えてきます。
しつけは、子どもを強く押さえつけることではありません。
子どもが根を張り、形を整え、自分の力で生きていけるように支えることです。
生活習慣、マナー、道徳的な意識。
これらは、毎日の家庭生活の中で少しずつ育っていきます。
そして子どもは、親や身近な大人の姿を見て学びます。
だからこそ、保護者の関わりはとても大切です。
完璧である必要はありません。
子どもと一緒に生活を整え、失敗したらやり直し、よい行動を一つずつ積み重ねていくことが大切です。
よいしつけは、子どもの自立を促します。
そして、自分を大切にし、人と関わり、社会の中で充実した人生を送るための土台になります。
しつけとは、子どもを縛るものではなく、子どもの未来を支えるもの。
そのように考えると、日々の声かけや関わり方も、少しやさしく、前向きなものになっていくのではないでしょうか。
参考 コトバンク「しつけ」
「仕付け」は、礼儀作法を身につけるよう教える意味、裁縫で縫い目を整える仮縫い、田畑に作物を植え付ける意味を持つ言葉です。また「躾」は、身を美しくする意を表す国字とされています。
家庭教育は、子どもに生活のために必要な習慣を身につけさせ、自立心を育て、心身の調和のとれた発達を図るものとされています。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)