言葉の発達についてー子どもの言葉は「物への興味」から広がる
対物関係という大切な土台
子どもの言葉の発達は、「聞く力」「声に出す力」「人と関わる力」だけで育つものではありません。
もう一つ大切なのが、身の回りの物に興味を持ち、その名前や使い方、意味を知っていく力です。
これを、言葉の発達の土台として「対物関係」と考えることができます。
前々々回は、言葉を聞き取る音声知覚。
前々回は、声を出し、まねし、言葉にしていく音声表出。
前回は、人と関わりたい、伝えたいと思う対人関係についてお伝えしました。
今回は、4つの土台の最後として、
「対物関係」=物に興味を持ち、名前や意味を知る力
について、保護者の方に分かりやすくお伝えします。
目次
- 前回のおさらい:「人との関わり」から「物への興味」へ
- 言葉の発達を支える4つの土台
- 対物関係とは何か
- 対物関係が育つと、どんな姿が見られる?
- 家庭でできる対物関係の育て方
- 「名前を覚えさせる」より「体験と結びつける」
- 心配なときは相談してよい
- まとめ
今までの「子どもの言葉の発達」についての記事
言葉の発達についてー子どもの言葉は「人と関わりたい気持ち」から
前回のおさらい:「人との関わり」から「物への興味」へ
前回の記事では、子どもの言葉は、人と関わりたい、伝えたいという気持ちの中で育つとお伝えしました。
大人の顔を見る。
「見て」と伝える。
一緒に笑う。
できたことを見せる。
気持ちを受け止めてもらう。
こうした対人関係は、言葉を「誰かに届ける力」として支えています。
今回のテーマである対物関係は、そこから少し視点を変えます。
対人関係が「人とつながる力」だとすれば、対物関係は、
物に興味を持ち、物の名前・使い方・意味を知っていく力
です。
簡単に言うと、これまでの記事との違いは次のようになります。
| 回 | テーマ | 内容 |
|---|---|---|
| 第1回 | 音声知覚 | 音や声を聞き取る力 |
| 第2回 | 音声表出 | 声を出し、言葉にする力 |
| 第3回 | 対人関係 | 人と関わり、伝えたいと思う力 |
| 第4回 | 対物関係 | 物に興味を持ち、名前や意味を知る力 |
言葉は、「人」との関わりの中で育ちます。
同時に、「物」への興味を通して、どんどん広がっていきます。
言葉の発達を支える4つの土台
子どもの言葉の発達には、次の4つの土台があります。
| 土台 | 内容 |
|---|---|
| 音声知覚 | 音や声、言葉の違いを聞き取る力 |
| 音声表出 | 声を出す、まねする、言葉にする力 |
| 対人関係 | 人と関わりたい、伝えたいと思う力 |
| 対物関係 | 物に興味を持ち、名前や意味を知る力 |
今回の対物関係は、子どもが身の回りの世界を知っていく力です。
たとえば、子どもは最初から「車」「スプーン」「くつ」「ボール」といった言葉の意味を知っているわけではありません。
実際に見る。
触る。
転がす。
なめる。
落とす。
使ってみる。
大人が名前を言う。
こうした経験を通して、少しずつ
「これはボール」
「これは食べるときに使うもの」
「これは外に行くときに履くもの」
と分かっていきます。
言葉は、ただ耳で聞くだけではなく、体験と結びつくことで深く育っていきます。
参考(日本言語聴覚士協会) 乳幼児健診入門ガイド
対物関係とは何か
対物関係とは、簡単に言うと、
子どもが物に興味を持ち、その特徴や使い方、名前を知っていく力
のことです。
たとえば、次のような姿です。
ボールを転がす。
積み木を積む。
スプーンを持って食べようとする。
車のおもちゃを走らせる。
絵本の動物を指さす。
お気に入りのぬいぐるみを抱っこする。
くつを見て、外に行くことを思い出す。
コップを見ると、飲み物と結びつける。
こうした経験の中で、子どもは物の名前だけでなく、
その物が何に使われるのか
どんな特徴があるのか
どんな場面で出てくるのか
を学んでいきます。
大人から見ると、ただ遊んでいるように見えるかもしれません。
でも子どもにとっては、物の世界を調べている大切な時間です。
いわば、小さな研究者です。
研究テーマは「このボールはどこまで転がるのか」「この積み木は何個まで積めるのか」。なかなか本格派です。
対物関係が育つと、どんな姿が見られる?
対物関係が育ってくると、日常の中で次のような姿が見られることがあります。
・気になる物をじっと見る
・手を伸ばして触ろうとする
・物を振る、転がす、落とすなどして試す
・お気に入りのおもちゃを選ぶ
・絵本の中の絵を指さす
・「くつ」「ぼうし」など、物と場面を結びつける
・大人が言った物を探そうとする
・物の使い方をまねする
・ごっこ遊びの中で物を使う
・「これは何?」というような興味が増える
ここで大切なのは、物の名前をたくさん覚えているかどうかだけで判断しないことです。
子どもは、名前を言える前から、すでに物の意味を理解し始めています。
たとえば、まだ「くつ」と言えなくても、くつを見ると玄関へ行こうとする。
「スプーン」と言えなくても、食事のときにスプーンを使おうとする。
「ボール」と言えなくても、転がして遊ぶ。
こうした姿も、対物関係が育っているサインです。
家庭でできる対物関係の育て方
対物関係を育てるために、特別な教材をたくさん用意する必要はありません。
毎日の生活や遊びの中に、物と言葉を結びつけるチャンスはたくさんあります。
子どもが見ている物に言葉を添える
まず大切なのは、子どもが興味を持っている物に、大人が言葉を添えることです。
子どもが車を見ていたら、
「車だね」
「赤い車だね」
「ブーブー走っているね」
子どもが犬を見つけたら、
「ワンワンいたね」
「かわいいね」
「歩いているね」
子どもがボールを持っていたら、
「ボールだね」
「ころころ転がるね」
「大きいボールだね」
このように、子どもの興味に合わせて言葉を返すと、物と言葉が結びつきやすくなります。
大人が教えたい言葉を一方的に並べるより、子どもが今見ているもの、触っているものに合わせて話す方が伝わりやすいです。
実際に触って、動かして、使ってみる
子どもにとって、物を理解するうえで「体験」はとても大切です。
ボールは転がる。
積み木は積める。
スプーンは食べるときに使う。
くつは外に行くときに履く。
帽子は頭にかぶる。
こうしたことは、説明だけではなかなか分かりません。
実際に使ってみることで、物の意味が分かっていきます。
「これはスプーンだよ」と言うだけでなく、
「スプーンで食べようね」
と使う場面と一緒に伝える。
「これはくつだよ」と言うだけでなく、
「くつを履いて、お外に行こうね」
と行動と結びつける。
このように、物の名前と体験がつながることで、言葉の理解が深まります。
比べる言葉を少しずつ入れる
対物関係が育ってくると、子どもは物の違いにも気づき始めます。
大きい・小さい。
長い・短い。
赤い・青い。
重い・軽い。
かたい・やわらかい。
たとえば、遊びの中で、
「大きいボールだね」
「小さい積み木だね」
「赤い車だね」
「ふわふわのぬいぐるみだね」
と伝えることで、子どもは物の特徴と言葉を結びつけていきます。
最初から覚えさせようとしなくて大丈夫です。
日常の中で自然に言葉を添えるだけで、子どもは少しずつ違いに気づいていきます。
ごっこ遊びを楽しむ
ごっこ遊びは、対物関係を育てるうえでとても大切です。
ぬいぐるみにごはんを食べさせる。
車を走らせる。
人形を寝かせる。
おもちゃの電話で話すふりをする。
積み木を食べ物に見立てる。
こうした遊びでは、子どもは物をただ触るだけでなく、
意味を持ったものとして使う
ようになります。
たとえば、ぬいぐるみにスプーンを近づけて「ごはんだよ」とする。
これは、スプーンやごはん、食べるという行動の意味がつながってきている姿です。
ごっこ遊びの中では、言葉も自然に増えやすくなります。
「どうぞ」
「おいしいね」
「ねんね」
「いってきます」
「ただいま」
こうした生活の言葉が、遊びの中で楽しく育っていきます。
絵本で物の名前や世界を広げる
絵本は、対物関係を広げるよいきっかけになります。
家の中にはない動物。
乗り物。
食べ物。
季節のもの。
いろいろな表情や場面。
子どもは絵本を通して、身近な世界だけでなく、少し広い世界に触れることができます。
絵本を読むときは、きれいに読み切ることだけを目標にしなくても大丈夫です。
子どもが絵を指さしたら、
「りんごだね」
「ワンワンいるね」
「大きいバスだね」
と、その場でやりとりしてみましょう。
ページを飛ばしても、同じページばかり見ても大丈夫です。
子どもが興味を持ったものを一緒に見る時間そのものが、言葉の発達につながります。
「名前を覚えさせる」より「体験と結びつける」
対物関係を育てるときに大切なのは、物の名前を無理に覚えさせることではありません。
「これは何?」
「言ってごらん」
「違うよ、もう一回」
このような質問や練習が多くなりすぎると、子どもによっては負担に感じることがあります。
もちろん、名前を聞いたり、教えたりすること自体が悪いわけではありません。
ただ、小さな子どもの時期には、まず
物に興味を持つこと
触って楽しむこと
使って分かること
大人と一緒に見て楽しむこと
が大切です。
子どもが「これは楽しい」「もっと知りたい」と感じると、言葉も自然に入りやすくなります。
言葉は、丸暗記だけで育つものではありません。
実際の体験と結びつくことで、子どもの中にしっかり残っていきます。
心配なときは相談してよい
対物関係の育ちにも個人差があります。
動くものが好きな子、絵本が好きな子、積み木が好きな子、外遊びが好きな子。
興味の向き方は子どもによってさまざまです。
そのため、遊び方が他の子と少し違うからといって、すぐに心配しすぎる必要はありません。
ただし、保護者が強い違和感を覚えるときは、一人で抱え込まなくて大丈夫です。
たとえば、
・物への興味がかなり少ない
・おもちゃにほとんど関心を示さない
・物を使った遊びが広がりにくい
・同じ遊びに強くこだわり、切り替えが難しい
・大人と一緒に物を見る、見せるといった反応が少ない
・絵本や身近な物への反応が極端に乏しい
・保護者として気になる状態が続いている
このような場合は、小児科、自治体の発達相談、保健センター、言語聴覚士、心理職などに相談してみてもよいでしょう。
相談することは、子どもを決めつけることではありません。
子どもの今の興味や発達を知り、より合った関わり方を一緒に考えるためのものです。
※私たちの協力者であるゆうき先生も、言語聴覚士の資格を持った優しく優秀な相談相手です。
言語聴覚士とは?ことばの専門家「ゆうき先生」について

まとめ
今回のテーマである対物関係は、子どもが物に興味を持ち、名前や使い方、意味を知っていく力です。
第1回の音声知覚は、音や声を聞き取る力。
第2回の音声表出は、声を出して表す力。
第3回の対人関係は、人と関わり、伝えたいと思う力。
そして第4回の対物関係は、身の回りの物に興味を持ち、言葉の意味を広げる力です。
子どもの言葉は、ただ単語を覚えるだけで育つものではありません。
見る。
触る。
使う。
試す。
比べる。
まねする。
大人と一緒に楽しむ。
こうした体験の中で、子どもは物の世界を知り、その名前や意味を少しずつ理解していきます。
家庭でできることは、特別な訓練ではありません。
子どもが見ている物に言葉を添える。
実際に触って使う。
特徴を言葉にする。
ごっこ遊びを楽しむ。
絵本で世界を広げる。
名前を覚えさせるより、体験と結びつける。
その積み重ねが、子どもの言葉を豊かに育てていきます。
これまで4回にわたって、子どもの言葉の発達を支える土台を見てきました。
音声知覚、音声表出、対人関係、対物関係。
この4つは、別々に見えて、実はつながっています。
子どもは音を聞き、声を出し、人と関わり、物に興味を持つ中で、少しずつ言葉の世界を広げていきます。
言葉の発達は、急がせるものではありません。
毎日の生活の中で、子どもが安心して見て、聞いて、触って、伝えられる環境をつくること。
それが、子どもの言葉を育てる大切な土台になります。
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執筆:中山 快(株式会社リコポ 代表)